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法人による食品寄付:税務上のメリットと手続き

Tags: 食品寄付, 税務, CSR, 法人, 損金算入

企業の食品寄付と税務上の考慮点

企業の社会貢献活動として、食品寄付(フードバンクや子ども食堂などへの寄付)が広く行われています。これは、食品ロス削減に貢献すると同時に、食料を必要とする人々への支援に繋がる重要な活動です。この食品寄付を実施するにあたり、企業のCSR担当者の皆様が把握しておきたい点の一つに、税務上の取り扱いがあります。適切に手続きを行うことで、税務上のメリットを享受できる可能性があります。

食品寄付は「寄付金」に該当

企業が営利を目的としない法人や団体に対して行う金銭や物品の贈与は、原則として法人税法上の「寄付金」に該当します。食品寄付も、この寄付金に含まれます。

寄付金については、税務上、全額を損金(税務上の費用)として算入できるわけではなく、一定の限度額が設けられています。この限度額は、寄付先の法人の種類によって異なります。

損金算入の限度額について

法人税法上の寄付金の損金算入には、大きく分けて以下の種類があります。

  1. 国または地方公共団体に対する寄付金:全額が損金に算入されます。
  2. 指定寄付金:財務大臣が指定した、公益を目的とする特定のものに対する寄付金で、全額が損金に算入されます。
  3. 特定公益増進法人等に対する寄付金:学校法人、社会福祉法人、更生保護法人、特定の独立行政法人、一定の要件を満たすNPO法人(認定NPO法人、仮認定NPO法人)などに対する寄付金です。一般の寄付金とは別に、別枠の損金算入限度額が設けられており、より多くの金額を損金に算入できる可能性があります。
  4. その他の寄付金(一般の寄付金):上記1〜3以外の寄付金です。損金算入できる金額には厳しい限度額が設けられています。

食品寄付を行う場合、寄付先のフードバンクや子ども食堂などが、上記のどの区分に該当するかによって、損金算入できる金額が変わってきます。多くのフードバンクは社会福祉法人や認定NPO法人として活動しており、特定公益増進法人等に該当する場合があります。この場合、より有利な別枠の限度額が適用される可能性があります。

特定公益増進法人等への寄付の損金算入限度額

特定公益増進法人等への寄付金には、「特定公益増進法人等に対する寄付金の損金算入限度額」が適用されます。この限度額は以下の計算式で算出されます。

(資本金等の額 × 0.375% + 所得の金額 × 6.25%) ÷ 2

この限度額とは別に、一般の寄付金の限度額も存在します。特定公益増進法人等への寄付はこの別枠の限度額まで損金算入が認められ、さらにその限度額を超えた部分や、それ以外の寄付金については一般の寄付金の限度額(資本金等の額と所得金額に応じて計算)まで損金算入が可能です。

したがって、食品寄付を行う際は、寄付先の団体が特定公益増進法人等に該当するかどうかを確認することが重要です。これは、より多くの寄付額を損金算入できる可能性が高まるためです。

税務申告上の手続き

食品寄付を税務上の寄付金として損金算入するためには、税務申告の際に以下の書類が必要となります。

これらの書類を保存しておき、法人税の確定申告書に添付または提示して申告を行います。具体的にどの書類が必要になるか、また申告書のどこに記載するかについては、会社の経理担当者や税理士にご確認いただくことを推奨します。

寄付する物品(食品)の評価額

食品を寄付する場合、寄付金の額は、その食品の「評価額」となります。原則として、寄付時点におけるその資産の時価とされています。ただし、期末の棚卸資産を寄付する場合など、税務上の評価方法にはいくつかのルールがありますので、こちらも専門家にご確認いただくのが確実です。

まとめ:税務知識を活用した社会貢献

企業による食品寄付は、社会にとって大きな意義を持つ活動です。この活動を継続的かつ効果的に行う上で、税務上の取り扱いを理解しておくことは、社内での承認を得やすくする一助となったり、活動コストを正確に把握したりするために役立ちます。

寄付先の団体が特定公益増進法人等に該当するか確認し、適切な証明書類を受け取り、税務申告で正しく処理することで、税務上のメリットを享受しつつ、社会貢献活動を推進することができます。具体的な手続きについては、必ず経理部門や税理士にご確認ください。適切な知識と手続きは、企業の社会貢献活動をより一層力強いものにするでしょう。